これを読めば茨木酒造のすべてがわかる!
明石の酒蔵、茨木酒造です。
茨木酒造がある兵庫県明石市は、かつて「西灘」と呼ばれた江戸時代からの酒どころであったことをご存じでしょうか。今回は、その歴史からはじまり、西灘の最盛期の名残を留める当蔵・茨木酒造について丸ごとご紹介していきます。
酒蔵や地酒といえば、どんな人が作っているのかと気になるもの。僭越ながら、当蔵の9代目杜氏・茨木幹人の人となり、そしてこだわりの酒造りや設備、代表銘柄「来楽」についての情報も合わせてお伝えしていきます。
地域に開かれた酒蔵として地域の皆さんとののかかわりも大切にしています。そんな私たちの取り組みも多くの方に知っていただければと思います。
これを読めば、茨木酒造のことがよ~く分かる、そんな記事になっています。明石の酒造りの歴史や明石の地酒、当蔵に興味のある方は、ぜひ読んでみてください!
目次
●江戸時代からの酒どころ「西灘」
●茨木酒造 歴史が息づく酒蔵
●研鑽を続ける9代目杜氏・茨木幹人
・醸造学を学び、修行の後独立
・こだわりは昔ながらの酒造り
・杜氏考案! こだわりの設備
●茨木酒造の酒と「来楽」
・代表銘柄「来楽」の名前の由来
・昔ながらの手造りの酒「来楽」は種類も豊富
・花酵母を使った「来楽 花乃蔵」
・受賞歴
・地域との連携で酒造り
●地域とのつながりを大切に 酒蔵イベントの案内
・来楽仕込みの会
・酒蔵寄席
・奈良漬の会
・蔵開き
・有料新酒試飲会
・フリースペースとしての利用も可能
●まとめ
●江戸時代からの酒どころ「西灘」
茨木酒造がある兵庫県明石市の西部は、300年以上前から酒造りが行なわれてきました。
江戸時代の初期、江井島の卜部八兵衛(うらべはちべえ)が、藩主の許可を得て醸造を始めたのが、明石の酒造りのはじまりといわれています。
東の酒どころである神戸の「灘」に対して、明石市西部は「西灘」と呼ばれています。播磨平野でとれた米と名水で仕込まれた日本酒は、その味と香りが評判に。このあたりは参勤交代の順路でもあったため、多くの往来・交易があったといわれています。そのため、明治時代の最盛期には、60軒ほどの酒蔵がありましたが、現在は6軒が残っています。
明石で酒造りが盛んになった理由は、高僧・行基(ぎょうき)が掘り当てたという井戸水など、良質な水が豊富なこと。播磨地方で作られる上質な「酒米(谷米)」。そして、冬に厳しい寒風が吹く「風土」―と、酒造りに欠かせない要素が揃っていたからだといわれています。それらの要素に、酒蔵ごとに伝承された杜氏の技術が組み合わさることで、西灘にはさまざまな名酒が誕生しました。
●茨木酒造 歴史が息づく酒蔵
茨木酒造は、西灘に現存する6軒の酒蔵の一つ。創業は、江戸末期の嘉永元年(1848年)です。兵庫県登録有形文化財に指定された酒蔵が、最盛期の西灘の面影を留めています。
この建物は趣だけでなく、酒造りに最適とされる「気温が低く風通しのよい」条件を満たした「北流れ」という造りになっています。南北に短く、東西に長い。夏の強い日差しを遮るために、南側は土壁。北側は、冬の寒風が入りやすくなっており、伝統的な酒蔵ならではの機能的な造りになっているのです。
●研鑽を続ける9代目杜氏・茨木幹人
・醸造学を学び、修行の後、独立
現在杜氏を務める茨木幹人は9代目です。東京農大で醸造学を学び、丹波杜氏に2年間修業をして独り立ち。現在も、先代や播磨の先輩杜氏たちから酒造りの技術を学びながら、研鑽を続けています。
・こだわりは昔ながらの酒造り
来楽の銘柄は、兵庫県の代表的な酒造好適米であり、全国的にも高い評価を得ている「山田錦」を中心に、「五百万石」「兵庫北錦」など100%兵庫県産の酒造好適米を使って酒造りを行っています。
酒米には、粒の中心に「心白(しんぱく)」という白く濁った部分があります。山田錦の心白は、でんぷんが柔らかく結合しているので菌が繁殖しやすく、良質の麹ができます。だから、山田錦でお酒を造ることにこだわっているのです。
茨木酒造は、米洗い・麹造り・発酵管理だけでなく、瓶詰からラベル貼りまで、すべてを杜氏と蔵人の手で行なう一元管理体制です。仕込みのタンクも小さく、品質向上を心がけながら、ひたすらに連綿と受け継がれた昔ながらの酒造りを守り続けています。
年間醸造量は、200~250石。1石は一升瓶100本ですから、一升瓶換算すると20,000~25,000本くらいになります。大手酒造メーカーの瓶詰ラインなら、3時間くらいで詰め終わる量の日本酒を当蔵では半年かけて造っているのです。
・杜氏考案!こだわりの設備
杜氏・茨木幹人のこだわりは、酒造りだけにとどまりません。設備や機械にも、さまざまなこだわりがあります。
多くの蔵で、瓶貯蔵で使われている冷蔵設備を麹室(こうじむろ)に転用。麹を製造するための温室である麹室は、木造が一般的。この設備を転用したことで、壁や床の清掃がしやすく、清潔な状態を保てるようになりました。
また、酒袋でもろみを搾って酒粕と酒に分ける「上槽(じょうそう)」にもこだわりが。
一般的に、上槽に使われるのは連続式自動ろ過圧搾機という機械。もろみを圧搾機に通して、酒粕と酒を分けます。茨木酒造は2017年に圧搾機を新調、臭いが吸着しない素材を使った圧搾機を探し出し、採用しています。
●茨木酒造の酒と「来楽」
・代表銘柄「来楽」の名前の由来
茨木酒造の代表銘柄は「来楽」。
中国の思想家・孔子による論語の一節「朋あり 遠方より来たる また楽しからずや」に由来した名前です。「人生の最高の楽しみは、友と酒を酌み交わし語り合うこと」という意味で、その酒席にふさわしい酒として名付けられました。また、「来楽」は、裏からも表からも同じに見える左右対称文字。「裏表がない」縁起のいい名前です。
・昔ながらの手造りの酒「来楽」は種類も豊富
来楽は、兵庫県を代表する酒造好適米である山田錦と名水を使い、170年の伝統に培われた技術によって造られています。
市内の料理店から「地元の白身に合う定番の上質な酒を」という声に応えた「来楽 純米吟醸」をはじめとする「日本酒 定番」シリーズ。精米歩合によってさまざまな香りが楽しめる「山田錦」シリーズ。上品で華やかな香り、贈答品としても喜ばれる「日本酒 極上」シリーズ、そして「生原酒」など、公式サイトではカテゴリーに分けて数種類ずつ紹介しています。気になるカテゴリーの中から、お好みの商品をお選びください。
・花酵母を使った「来楽 花乃蔵」
国内で唯一発酵・醸造専門の学科がある東京農業大学。そこで学んだ杜氏・茨木幹人は、花酵母研究会に所属しています。
現在では、そこでの学びを活かして、花から分離した酵母を使った日本酒も造っています。
アベリアや月下美人などの花酵母を使った「来楽 花乃蔵」シリーズは、フルーティーな香りでワインのように楽しめるお酒。日本酒が苦手な人でも飲みやすいと、女性を中心に人気があります。
・受賞歴
来楽 大吟醸35 2015年全国新酒鑑評会金賞受賞
・地域との連携で酒造り
茨木酒造では、地域社会と連携してさまざまな新商品を生み出しています。
「まるの輪」
兵庫県篠山市にある小さな集落「丸山」に集まる人たちと、さらにその輪が広がることを願って造り始めたお酒。
「う米ぜ!」
兵庫県立大学先端食科学研究センターの教員・学生の皆さんと製造したお酒。
これからも茨木酒造は、地域社会や地域の未来を担う学生さんに対して、米からの日本酒造りを通して、さまざまな役割を果たしていきたいと考えています。
●地域とのつながりを大切に 酒蔵イベントの案内
茨木酒造は、地域とのつながりを重視してさまざまなイベントを企画・開催しています。
※開催日時については、HPの新着情報などでご確認ください。
・来楽仕込みの会
酒米の田植えから稲刈り、仕込み、酒搾りまで、日本酒造りを体験してもらえます。酒造りを、酒米栽培から体験してもらうことで、さらに日本酒を楽しんでもらえるようになりました。
・酒蔵寄席
平成20年に兵庫県登録有形文化財に指定された風情のある空間で地域の方に楽しんでもらおうと、桂三若さんなど落語家さんを招いて「酒蔵寄席」を春と秋の年に2回開催。記念の会には大御所も登場して、喜んでもらいました。
・奈良漬の会
塩漬けしていたウリに酒粕と砂糖を混ぜて、それを参加者自身が漬ける会です。約3カ月漬けて出来上がり。毎年200樽ほどの奈良漬を漬けています。「この奈良漬しか食べない」と言う参加者がいるほどの出来栄えです(7月頃に開催)。
・蔵開き
毎年春と秋には、蔵開きを開催していす。風情溢れる空間で美味しい料理とお酒を楽しむひとときは格別…と、毎回ご好評をいただいております。
・有料新酒試飲会
毎年11月~3月末、新酒試飲会を開催しています。平成20年に兵庫県登録有形文化財に指定された酒蔵で、お酒の豆知識を学び、新酒を味わいます。
プログラム
・杜氏・茨木幹人が蔵案内を務める酒造見学
・日本酒ミニ講座(山田錦に関する豆知識、酒造りの工程説明、蔵の設備や機器の説明、日本酒の種類を説明)
・新酒の試飲会
〇期間/11月~3月末までの土日祝(但し、12月を除く)
○時間/開始13:00、終了15:00
○料金/1人1,000円(新酒の試飲)
※予算に合わせて料理を追加することもできます。
受付は10名以上から。要予約。詳細はお問い合わせください。
・フリースペースとしての利用も可能
兵庫県登録有形文化財に指定された伝統的な酒蔵を使って、「その場でお酒が飲める」「イベントが開催できる」など、自由度の高いフリースペースをご利用いただけます。ご利用希望の方はお問い合わせください。
●まとめ
兵庫県明石市は、300年以上昔からの酒どころ。その歴史を担う酒蔵の一つが茨木酒造です。山田錦を中心とする品質の良い酒米と名水、そして酒蔵の伝統を継承した9代目杜氏の技からバランスのいい日本酒が生まれます。
今回は、杜氏の酒造りと設備についてのこだわりや、代表銘柄・来楽の魅力など、茨木酒造にまつわるすべてをご紹介しました。明石の自然と風土、そして地域の人々とつながりながら成長する茨木酒造を、これからもどうぞよろしくお願いいたします。