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覚えておきたい日本酒の種類!「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」の違いを解説
明石の酒蔵、茨木酒造です。
近頃は、日本酒専門店だけではなく、レストランや居酒屋でも、さまざまな地域の日本酒を提供するお店が増えてきましたね。ドリンクメニューにも、日本酒の覧にさまざまな地酒の名前が並んでいるということも珍しくなくなりました。
ところで皆さんは、日本酒を選ぶとき、何を目安に選んでいますか。お気に入りの銘柄や知っている銘柄が見つからない場合、産地や値段、メニューに添えられた説明書きなどさまざまな情報を参考に選ばれると思います。しかし、同じ銘柄の日本酒でも「純米○○」「本醸造○○」「○○吟醸酒」というように、いくつも種類があったりして、なんとなく良いお酒のようだけどよくわからない、毎回選ぶのに苦労しているという方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな方のために、日本酒の代表的な種類である「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」の3つの違いを詳しく解説。これを知っていれば、自分好みの日本酒やお料理に合う日本酒を見つける目安にすることができます。上手にチョイスして日本酒ライフをもっと楽しみましょう。
目次
●日本酒とは
●「普通酒」と「特定名称酒」の違い
●原料や製法によって分類される特定名称酒
・原料の違い
・精米歩合の違い
・発酵時の条件の違い
●特定名称酒は大きく分けて3種類
・純米酒
・本醸造酒
・吟醸酒
●応用編! 特定名称酒8種類を解説
●茨木酒造の「来楽」を純米酒、本醸造酒、吟醸酒の3種類に分類してみた
●まとめ
●日本酒とは
「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」の3つの違いを説明する前に、そもそも日本酒とはどんなお酒なのかを知っておく必要があります。「今さら?」と思われるかもしれませんが、日本酒の定義からおさらいしましょう。
日本酒とは、お酒にかかる税金やお酒の製造、販売に関することを定めた「酒税法」という法律の中で、「米、米麹及び水を原料として発酵させ、こしたもの」と定義されています。
●「普通酒」と「特定名称酒」の違い
日本酒は、「普通酒」と「特定名称酒」の二種類に分けられます。それぞれがどんな日本酒なのか、違いを見ていきましょう。
・普通酒
「普通酒」をひとことで説明すると、「特定名称酒」以外の日本酒のこと。「特定名称酒」については、ひとまず置いておくとして、一般に流通している大部分の日本酒といえば、この「普通酒」になります。
原料や製造法に決まりがなく、価格が比較的リーズナブルなのが特徴。「テーブルワイン」のような日本酒といえばわかりやすいでしょうか。日常的に楽しむための日本酒です。
・特定名称酒
「特定名称酒」とは、日本酒の原料や製法によって分類された酒のこと。よりこだわってつくられたお酒といっても良いかもしれません。一定の条件を満たしてつくられた日本酒は、「特定名称酒」を名乗ることができ、どんな原料や製法でつくられた日本酒なのかを、それによって見分けることができるようになっています。
しかし一方で、わかりにくさの原因を招いている理由もここにあります。同じ銘柄の日本酒の中に、「純米○○」「本醸造○○」「○○吟醸酒」というように、いくつも種類ができてしまうから。つまり、この特定名称酒の分類とその違いがきちんと把握できていれば、お酒選びがグッとスムーズになるということです。
●原料や製法によって分類される特定名称酒
特定名称酒は、大きく分けると「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」の3つに分類されますが、それぞれの説明をする前に、まずは分類にかかわる、原料や製法について説明しましょう。
・原料の違い
日本酒の原料は「米、米麹と水」。これは、3種類すべての特定名称酒にあてはまります。純米酒は「米、米麹と水」のみでつくられており、本醸造酒と吟醸酒はそこに醸造アルコールが添加されています。
ちなみに醸造アルコールとは、甲類焼酎と同じ方法で造られた蒸留酒のことで、高濃度の焼酎のようなもの。醸造アルコールを添加するのは江戸時代頃から行なわれており、アルコール度数の低い日本酒が雑菌に負けないようにするのが目的です。
・精米歩合の違い
精米歩合とは、精米程度を数値化したもの。玄米を削って残った部分を%で表しています。日本酒造りでは、この精米作業のことを「磨く」と呼んでいます。米の外側部分はほとんどが脂質やタンパク質。それが酒の雑味の原因になります。
そこで、外側部分を削り、雑味を排除するのです。つまり、精米歩合の数字が低いほど「よく磨かれている」(=雑味が少ない)ということになります。
純米酒には精米歩合の規定がありませんが、本醸造酒と吟醸酒については精米歩合によって、さらに細かく種類が分けられます。
・発酵時の条件の違い
日本酒造りの流れは次のようになります。
精米→洗米/浸漬→蒸米/放冷→麹造り→酒母造り→醪(もろみ)・仕込み
→上槽→濾過/火入れ→貯蔵/調合・割水→火入れ/瓶詰め
この中の醪造り(酒母に、蒸米と麹、水を入れて発酵させる)の段階で、温度や時間を変えると、分類が変わってきます。
例えば、吟醸酒の場合、60%以下に精米した白米を、低温で時間をかけて発酵させる「吟醸造り」という特有な芳香(吟醸香)を有するように醸造されます。
●特定名称酒は大きく分けて3種類
さて、ここからが本題!原料や精米歩合などの条件を満たした、3つの特定名称酒「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」のそれぞれの特徴を説明していきます。
・純米酒
純米酒とは、米、米麹、水だけで造られた日本酒のこと。純米酒は、その名の通り、純粋に米だけで造られた酒。醸造アルコールを使用しないため、米本来の旨みや甘み、コク、ふくよかさ、米ならではの香りが楽しめます。
冷やから燗まで、さまざまな温度帯で楽しめることも特徴です。
・本醸造酒
本醸造酒は、米と米麹、水の他に、醸造アルコールを加えて造ります。また、精米歩合は「70%以下のもの」と定義されています。味のバランスを整えるために醸造アルコールが添加されますが、添加量は、原料に用いる米の重量の10%未満と決められています。
後味がすっきりとした、いわゆる「辛口」のお酒になります。本醸造酒ならではのキレの良さを味わうなら、まずは冷酒で飲むのがおすすめです。
・吟醸酒
吟醸酒とは、米と米麹、水に醸造アルコールを加えた原料で造られています。また、「精米歩合が60%以下のもの」と定義されています。さらには、醪造りの段階で、低温度かつ長時間かけて発酵させる「吟醸造り」という手法を行なっています。
それによって生まれるフルーティーな香り(吟醸香)が特徴。日本酒の香りを楽しみたいという人におすすめの日本酒です。冷やしすぎず、温めすぎないようにするのがポイント。10℃(花冷え)が、一番香りを楽しめる温度帯です。
●応用編! 特定名称酒8種類を解説
純米酒、本醸造酒、吟醸酒。この3種類の原料や製法、特徴について、ご理解いただけたでしょうか。主に「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」に分類される3種類の特定名称酒は、さらに細かく分けると8種類になります。
わかりやすいように、この8種類の特定名称酒の原料や精米歩合、製造方法等の違いを表にまとめてみました。
種類 | 特定名称 | 特徴 | 原料 | 精米歩合 | その他の要件 |
---|---|---|---|---|---|
純米酒 | 純米酒 | 米、米麹及び水を原料とした清酒。 醸造アルコールや糖類は使用しない。 |
米、米麹、水 | ー | 香味、色沢が良好 |
特別純米酒 | 米、米麹、水 | 60%以下 | 香味、色沢が特に良好 | ||
本醸造酒 | 本醸造酒 | 糖類は使用せず、 少量の醸造アルコールを添加した清酒。 |
米、米麹、水、醸造アルコール | 70%以下 | 香味、色沢が良好 |
特別本醸造酒 | 米、米麹、水、醸造アルコール | 60%以下 | 香味、色沢が特に良好 | ||
吟醸酒 | 吟醸酒 | 精米歩合60%以下とし、低温発酵による純米酒及び本醸造酒。 果実のような吟醸香がある。 |
米、米麹、水、醸造アルコール | 60%以下 | 香吟醸造り 固有の香味、色沢が良好 |
大吟醸酒 | 米、米麹、水、醸造アルコール | 50%以下 | 吟醸造り 固有の香味、色沢が特に良好 | ||
純米吟醸酒 | 米、米麹、水 | 60%以下 | 吟醸造り 固有の香味、色沢が良好 | ||
純米大吟醸酒 | 米、米麹、水 | 50%以下 | 吟醸造り 固有の香味、色沢が特に良好 |
同じ銘柄でも、種類によって味わいが異なる理由がこれでお分かりいただけたでしょうか。純米酒、本醸造酒、吟醸酒と特定の名称を名乗ることが許された日本酒は、原料や精米歩合、製法などによってそれぞれ価値が与えられているのです。
価格や銘柄だけでではなく、こうした日本酒の価値を知ることで、さらに日本酒選びが楽しくなりますね。
●茨木酒造の「来楽」を純米酒、本醸造酒、吟醸酒の3種類に分類してみた
兵庫県明石市にある酒蔵・茨木酒造でも、さまざまな種類の日本酒を造っています。もちろん、代表銘柄の「来楽」を冠する特定名称酒もバリエーション豊富にそろいます。
兵庫県の酒造好適米である山田錦と名水を使い、9代目杜氏が酒蔵に伝承された技によって醸した「来楽」シリーズのお酒を「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」の3種類に分類してみました。あなた好みの「来楽」を見つける目安にしてください。
・純米酒
「来楽 純米」(精米歩合65% 中辛口)
当蔵の純米ラインナップで唯一の熟成タイプ。穀物や麹の香りが楽しめます。ほんのりとした甘みで、お燗にすると味わいが変わります。
「来楽 山田錦 純米75」(精米歩合75% 中辛口)
山田錦を低精白し、7号酵母と組み合わせました。やさしい香りですが、口に含むとグレープフルーツのような味わいに。冷酒はキリっと、燗酒は味の膨らみが楽しめます。
・本醸造酒
「来楽 本醸造」(精米歩合68% 辛口)
唯一の辛口。味の幅やボリューム感が少なく、キレのよさを好む人におすすめ。定番の辛口の酒としてお楽しみください。
・吟醸酒
「来楽 山田錦 吟醸50」(精米歩合50% 中口)
口に含んだ時にビターチョコのような風味が立ち、米の豊かな膨らみが口中に広がります。コクと余韻が続く濃淳な日本酒。冷酒、常温、燗酒でも美味しいです。
「来楽 大吟醸35」(精米歩合35% 中甘口)
香りは華やか、ほのかな甘みがありながらすっきりとした味。お料理を引き立てる上品な酒です。2015年全国新酒鑑評会金賞受賞。
「来楽 純米吟醸」(精米歩合58% 中辛口)
最初は甘く感じますが、キレのある後味が印象的。ほんのりと華やかな香りです。冷酒、燗酒、どちらでも美味しいです。
「来楽 山田錦 純米吟醸58」(精米歩合58% 中辛口)
山田錦を原料に、9号酵母で醸した純米吟醸です。青りんごのようなフルーティーな香りに、白桃のようなほのかな甘さが特徴です。
「来楽 純米大吟醸35」(精米歩合35% 中口)
当蔵随一、精米歩合35%の極上の日本酒です。上品できれいな仕上がりで、クセがなく、ライムのようなさわやかな微香。贈り物にも最適です。
●まとめ
日本酒の種類についてご紹介しました。「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」、それぞれの定義やその違いを知ると、日本酒の解説文に出てくる「米のうまみ」「フルーティーで華やか」「キレのある後味」といった味や香りの理由がわかりますね。
日本酒のボトルを見ると、最初に銘柄が目に飛び込んできます。その次は、ラベルに記載された呼称や原料、精米歩合もぜひ確認してみましょう。3種類の違いを知っていると、ラベルを読んだだけで日本酒の味が想像できたり、日本酒選びのヒントにしたり…と、迷わずに自分の好みの日本酒にたどり着けることができるはず。ぜひ、シーンやお料理にぴったり合った美味しい日本酒をお楽しみください!